相転移とは何か!とっても簡単に説明するよ!!(書き始めの意気込み)
最近、大学院で「1次相転移」の研究を始めたので、現在、頭の中にある限りの知識で、「相転移とは何か」の記事をできるだけわかりやすく書いてみました!
相転移とは?
相転移とは、考えている物体の周りの環境の「物理量(例えば、温度、圧力、磁場、電場など物理的な値のこと)」を変化させたときに、物体の状態がガラっと大きく変わることをいいます。
例えば、水は、水蒸気(気体)、水(液体)、氷(固体)の3つの状態(これを物理用語では「相」といいます)を取ります。
圧力は、私たちが普段、生活している大気圧の環境で一定として、「物理量」としては温度だけを変化させると、「温度に関する」相転移が起こります。その相転移が起こる温度を、「転移温度」と言ったりします。
水の例でいうと、水の「転移温度」は、0度と100度です。
他にも例えば、二酸化炭素は大気圧の下では、気体と固体(ドライアイス)の2つの状態(=相)を取ります。酸素もすっごく冷やすと、液体や固体になります。
固体・液体・気体以外の相転移の例も挙げてみましょう👇
- 磁性体の相転移:磁石をめちゃくちゃ熱くしていくと、磁石は磁石としての性質を失います。つまり、鉄を引き付けたり、磁石と磁石でくっついたり、反発したりしなくなります。物理用語では、磁石の時の状態を「強磁性体」、磁石ではなくなった時の状態を「常磁性体」といいます。
- 超伝導の相転移:超伝導状態とは、ある温度以下で、電気抵抗がゼロになるという不思議な現象です。これも、抵抗値がある温度でいきなりゼロになるので、相転移です。
1次・2次相転移とは?
現実的には1次か2次かを見分けるのは難しい時もある
相転移には1次と2次があります。(3次以上もあるそうですが、3次以上のことは普通あまり考えません。)
大学で物理を勉強していても、1次相転移と2次相転移を説明できる人は少ないかもしれません。
それもそのはずで、1次相転移と2次相転移の違いは、実験結果を見て必ずしもすぐにわかるものではないため、判断基準がはっきりしていないからです。
1次相転移にあって2次相転移にない性質や、2次相転移にあって1次相転移にない性質はいろいろとあるので、そういうのを調べてみて、あぁ、この物質の、この「物理量」を変えたときの相転移は、1次だ!とか2次だ!というように、物理屋さんは判断します。両方の性質が見られた時は、「1次っぽい2次だ」とか、「弱い1次だ」とかいうこともよくあります。
とはいっても、数学的には1次か2次かの違いを判断する方法は厳密に定義されています。
それは、例えば環境の「物理量」として温度を連続的に変化させた時に、「転移温度」で、「秩序パラメータ」が不連続に変化するのが1次、連続的に変化するのが2次というものです。
「秩序パラメータ」とは、状態がどのくらい秩序状態(=そろっている、まとまっている)にあるかを表す量で、逆にバラバラな状態を無秩序な状態といい、秩序パラメータの値は小さいと考えます。
例えば、水の例でいうと、密度(=凝縮具合)を秩序パラメータとすることができます。気体が最もバラバラな状態で密度は低く(=密度の値は小さい)、固体が最も秩序化した状態で密度は大きくなります。
水の相転移は1次?それとも2次?
では、大気圧の下での、水の温度に関する相転移は、1次と2次のどちらでしょうか?
答えは、1次です!
気体から液体、液体から固体のどちらの相転移も1次です。
「数学的な」根拠としては、「密度が温度に関して不連続に変化するから」ということになると思います。
でも、密度が温度に関して不連続に変化するかどうかを実験結果から判断することはそんなに簡単ではありません。
上の左の図のように、秩序パラメータが曲線で書かれていれば、曲線が途切れているか、つながっているかで連続か不連続かが判断できますが、実験データは点の集まりだし、実験誤差も含まれるので、判断が難しい場合も多いです。
では、水の相転移が1次であることの、「物理的な」根拠は何でしょうか?
それは、「潜熱」があることです。
「潜熱」とは、例えば、水が蒸発する時に吸収される熱(=蒸発熱)のことです。人間が汗をかく理由は、汗が蒸発する時に汗の中の水分が「蒸発熱」として、私たちの体から熱を奪ってくれることで、体温を下げるためです。よって、水の相転移に潜熱があることは、周知の事実です。(そうでないと、べたべたになるだけで暑い日に汗をかく意味はなく、進化論的に矛盾します。)
では、「潜熱がある」と、なぜ1次相転移なのでしょうか?
これを説明するには、大学の「熱力学」の知識が必要なのですが、僕なりの解釈で、直感的に説明してみます。
「潜熱」は、熱力学により、「(潜熱)=(エントロピー変化)×(転移温度)」として計算されます。つまり、潜熱があるということは、転移温度で、エントロピーが温度に関して不連続に変化するということです。エントロピーは、直感的には、状態の「バラバラ具合」を表します。つまり、無秩序な状態を表します。ということで、エントロピーが温度に関して不連続に変化するので、秩序パラメータも不連続に変化するといえます。
ちなみに、先述の磁石の相転移は2次の相転移です。その、物理的な根拠は、これまた、大学の「統計力学」の知識が必要ですが、言葉だけ紹介しておくと、「揺らぎの増大」、「磁化率の発散」などが根拠となっているのだと思います。(「磁化率や比熱の発散」は個人的には2次に特有の性質だと思うのですが、比熱は1次でも発散するという人も周りにいたり…それだけ、相転移の理論は難しい&奥が深いということみたい…)
ちなみに、もう一つ、水の相転移が1次であることの根拠として、「過冷却」という現象が起こることが挙げられます。過冷却とは、ゆっくり、きれいな水を、衝撃を加えないように冷やしていくと、0度以下でも、水が凍らないという現象です。過冷却状態の水に衝撃などを加えると、過冷却状態が壊れて、そこから一気に凍り始めます。慎重に冷やせば、-40度くらいまで水を液体のまま冷やせるそうです。
僕は人生で1度だけ過冷却状態の水を見たことがあります!
研究室旅行中に、2リットルのミネラルウォーターを間違えて冷凍庫に入れていたら、数時間入れていたのに凍ってなくて、よかったー、とほっとして、冷凍庫から水を取り出すと、ペットボトルを握った瞬間、握った指の先から、水が一気に凍っていくというのを目の当たりにしました!「おおっ!これが過冷却か!」と感動したと同時に、共同費で買った水を凍らせてしまったことに落胆するという経験をしました笑
過冷却が起こる原因は、これまた大学の「統計力学」の知識になりますが、「準安定状態」の存在です。過冷却状態の水は、準安定状態なのです。(僕はここら辺のことを理論的に研究しています。)
まとめ
できるだけ簡単に、相転移と相転移の1次・2次について説明しようと思ったのですが、やっぱり、難しくなりすぎたような気がします…
また、世界で一番わかりやすい説明を目指して、物理に関する記事を書いていきたいと思うので、カテゴリー一覧から、ぜひ、他の記事も見てみてね🐼
ちなみにこちらが僕が愛読している統計力学の教科書です。
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