僕は訳あって東大理物(=東京大学大学院理学系研究科物理学科)の院試(=大学院入学試験)を3回も受けました!
現在は、東大院生として理論物理の研究をしています。
学部生の頃はあまり真面目に授業を受けていなかったので、どんな勉強をすればいいのかわからず、3回とも苦戦しましたが、3回目の院試では、全問解くことができ、それなりに院試勉強法を確立できました。
そこで今回の記事では、僕がこれまでの経験を踏まえて、おすすめの東大理物の院試勉強法として、最低限やるべきことを紹介します!
院試までにこれだけはやっておきたい!
大学の授業を完璧にこなしてる人なら、過去問だけでいいと思います。
ここで紹介するのは、自分のように、ひとまず大学の単位はとってきたけど、体系だった物理の知識がない!という人向けです。
院試までにやっておきたい最低限のことは、結論から言うと、
- 数学と物理の参考書9冊を「しっかり読む」
- 過去問の解答作成をする
の2つです。
①参考書9冊をしっかり読む
参考書を読む目的を意識する
コロナの影響などにより試験問題の形式はこれまで何度か変わってきていますが、求められる知識は変わっていないと思います。基本的には、
- 数学:線形代数、微分方程式、フーリエ変換、複素関数など
- 物理:量子力学・統計力学・電磁気学
です。ただし、電磁気学の代わりに、解析力学や熱力学などが出題されることもあるようです。
他の院試対策に関する情報サイトでは、院試対策の参考書を多数挙げていますが、僕は東大理物院試に必要な参考書は9冊だけに絞りました。なぜなら、参考書を勉強する目的は、必要最低限な知識を体系立てて身に着けることだからです。ただ、いろんな参考書を「かじり読み」することは有益だと僕も思います。それは、ある参考書で理解できないことが別の参考書の説明の仕方なら理解できた!ということはよくあるからです。しかし、たくさんの参考書に全力で取り組むのおすすめしません。いろんな説明の仕方が頭の中に入り混じり、逆に体系立った知識の構築を妨げてしまうからです。
例えば、統計力学で出てくる「格子振動の比熱の温度依存性はどうなってるか?」と聞かれた時に、「それに関する参考書に書いてあった説明の流れを頭に思い浮かべられる」というのが、体系立った知識が身についているということになります。
参考書を「しっかり読む」とは?
参考書の勉強の仕方は人それぞれで僕自身もいろんな方法を学部生の時から試してきました。僕のおすすめの方法は、「参考書の中の計算式の行間を自分で計算して埋めながら、読み進めるというのを2周する」という方法です。
電車の中やカフェの狭いテーブルでも勉強できるように、安いA5サイズのノート(僕は無印のノートを使ってました)を片手に読み進めます。後で見返すことはほとんどないので、ボールペンで計算していきます。間違えたらペンでぐちゃぐちゃと消します。時々、思考を整理するために、箇条書きしたり、雑なノートまとめみたいなのを書いたりもします。
2周読む理由は参考書の後の方に出てくる概念を知った後に、初めの方を読むと理解しやすいといったことがよく起こるからです。2回読むことにしておけば、もし理解できないとこがあったり、行間埋めの計算が合わなかった時に、立ち止まりすぎず、ひとまず置いておくということができます。
数学の参考書(6冊)
数学のおすすめ勉強法は、
- 大学数学の参考書として有名な「マセマ」シリーズの内の6冊をしっかり勉強する
- サイエンス社の通称「黄本」として有名な「演習 大学院入試問題」の数学Ⅰ・Ⅱは実際に過去問を解く際に、類題を探してみたりする程度に辞書代わりとして使う
です。
「マセマの6冊」というのは、①線形代数→②複素関数→③常微分方程式→④フーリエ変換→⑤ラプラス変換→⑥偏微分方程式です。(この順番がおすすめ)
僕がやらなかった残りの3冊については、「統計学」は理物の院試ではほとんど出ない。「微分積分」は多重積分の変数変換で出てくるヤコビアンの使い方だけググって確認しとけば大丈夫。「ベクトル解析」は、電磁気学の参考書で学べるから不要、という感じです。
マセマシリーズは改訂版がたくさん出ていますが、古いものでも問題ないと思います。僕はメルカリで1冊あたり500~1000円くらいで6冊買いそろえました。1冊大体1週間で1周というペースで読みました。
物理の参考書(3冊)
物理の参考書は①量子力学(小形)→②統計力学(長岡)→③電磁気学(中山)の3冊です。
量子力学は猪木・川合が有名ですが、個人的には小形先生の本の方がわかりやすく、演習問題も院試必須問題という感じで無駄がなく、とてもおすすめです。
統計力学については、田崎さんの本が有名ですが、僕はまだ読んだことがありません。他と比べてどうかはわかりませんが、長岡先生の本を演習問題も含めてやっておけば、院試には自信をもって臨めました。
電磁気学については、砂川さんの本が有名ですが難しすぎます。中山先生の本はベクトルポテンシャルに関する説明がないのが欠点ですが(僕はいまだにベクトルポテンシャルには苦手意識がありますが院試はわりといけました!)、薄いのにわかりやすく丁寧で、最大のメリットは「基礎演習シリーズ 電磁気学(中山)」という演習問題版の本もあることです。電磁気学は体系立てて理解するのがとても難しいため、とりあえずいろんな問題を解けるようにするのが大事なので、演習問題版があるのは助かります。
物理の参考書は大体1冊を1周するのに2~3週間はかかった気がします。
②過去問の解答作成をする
過去問は東大の公式サイトで公開されています。解答は公開されていません。
「過去問の解答作成」とは、9冊の参考書を終えて、ちゃんと体系だった知識が身についているかの確認作業のことです。過去問については、模擬試験的に過去問を解くぞ!という姿勢で臨むのではなく、解答作成をするぞ!という気持ちで進めるのがおすすめ。なぜなら、9冊の参考書を終えても、過去問を前にすると何だっけ?となることはよくあることで、時間を測って過去問を解くと、自信を失ってしまうからです。
過去問を見てぱっと解けないところは、しっかり読んだ9冊の参考書に頼ります。東大理物の過去問にはやや発展的な問題もありますが、僕が解いた10年分の問題の98%くらいは、この9冊の参考書の知識をもとに解くことができました!過去問の解答作成をするぞ!という気持ちで、1つ1つの問題を曖昧さなく解いていくことが大事です。
ただ数学においては、ひらめきが必要なものもあり、マセマ6冊に戻っても解けない場合もあります。その時は問題の数式でググると知恵袋とかで回答が見つかることがありますが、何とか9冊の参考書の知識で解けないか、と試行錯誤するのが大切だし、物理・数学の醍醐味だと思います。
院試勉強においても、純粋に物理や数学の問題を楽しむことも大事です。だって、受かったらしばらくは、物理・数学に生活の時間の大半を費やすことになるんだから。
院試の点数開示申請しました
僕が3回目に受けた院試では、配点は「英語100点、量子力学100点、統計力学100点、電磁気学100点、数学100点」の合計500点満点だったと思います。点数開示の結果は、
- 英語:70点
- 量子力学:100点
- 統計力学:78点
- 電磁気学:56点
- 数学:60点
でした。風の噂によると、平均6割くらいが合格ラインらしいので、意外とぎりぎりだったかもしれません。全問解けたと思ってたのに、意外と計算ミスをしていたのか、勘違いで解けてたのか…
最後に
東大理物は2次試験もあります。今回は1次試験についての内容でした!
院試勉強でしっかり体系だった知識を身に着けておくこと、そして、これだけはしっかり読んだ!と自信を持って言える参考書があることは、大学院に進学してからも強い武器になります。
自分自身、院試ではたくさん苦労したので、少しでもこの記事の内容が、院試を頑張って大学院で好きな研究がしたい!という誰かの役に立てれば嬉しいです。
紹介した参考書一覧
物理(量子力学・統計力学・電磁気学)
あと、電磁気学(中山)の演習問題版がこちら↓
数学(マセマシリーズ・サイエンス社の黄本)
マセマシリーズの例として線形代数がこちら↓
そして、サイエンス社の通称黄本。数学Ⅰ・Ⅱ、物理Ⅰ・Ⅱがある。例としてこちら↓
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